サロメの乳母の話

2007-10-23-Tue-22:23
 塩野七生書評シリーズ
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 この本は12の短編小説の文庫で、全部で200ページくらいなので、一話が平均20ページ程度とお気軽な本である。
 中身も非常にお気軽。
 歴史など興味のない人にもお勧め。
 歴史的に有名な人の脇にいた人の視線からかかれた小説で、ほんの少しの史実をベースに七生さんが想像力を膨らませて有名人をチャカしながら面白おかしく書いている。

 第1話は『貞女の言い分』。 これは、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の主人公であるオデュッセウスを妻のペネロペから見たお話。 (ペネロペ・クルスは知っていると言う人は多いかもしれないが)
 ヨーロッパ人ならオデュッセウスといえば、ほとんどの人はトロイ戦争の英雄ということは分かるらしいが、道楽人もほとんど知らなかった。何年か前、テレビで映画のオデュッセウスを見たことがあるが、とても荒唐無稽でまるで、不思議の国のアリスのように、次々と不思議な国に行って怪物、妖怪に遭遇する。なぜ、この原本のオデュッセイアが名作なのかは理解できないが、この『貞女の言い分』から逆に分かってくるような気がする。
 ギリシャもやっぱり男社会であったのだろうが、かみさんのペネロペがたいしたかあちゃんだ。
 オデュッセウスが戦に行って20年ぶりに戻ってくるが、なんでこんなに遅くなったのか、ごちゃごちゃ言い訳を並べ立てる。という説になっている。
 まあ、このほうがもっともな解釈で、すこし聞き知った原本の方がわけが分からないと思うのは、道楽人だけではないと思う。

 もうひとつ、有名人の妻から見た話。『ダンテの妻の嘆き』はとても身につまされる。
 世渡り下手の旦那をもった妻がさんざん愚痴を言いながらも最後までつれそうという話である。もちろん道楽人とダンテは比較にならないが、かの天才も普通の生活での煩わしさの中で生きていたのかと思うと面白いものである。

 12個ある話のなかから、道楽人がチョイスした二つは、だんなとかみさんの話になってしまっている。
 なぜだろう?(笑)


 最後の饗宴・地獄編では、距離も時代も超えて、集まった悪女たちの会話が面白い。
 ただし、ここまで行くとチョット作り過ぎという感じもしないではないが。

 この本は、最初にも書いたが、地図も年表も必要ないので、西洋史ビギナーにはお勧め。
 というと、歴史専門家からはお叱りをうけそうなので、西洋歴史小説ビギナーといい改めておきましょう。
目次
タイトル対象の有名人物語る人
貞女の言い分 オデュッセウスオデュッセウスの妻=ペネロペ
サロメの乳母の話 ユダヤ王ヘロデの娘サロメサロメの乳母
ダンテの妻の嘆き神曲の作者ダンテダンテの妻
聖フランチェスコの母聖フランチェスコ聖フランチェスコの母
ユダの母親裏切り者ユダユダの恩師
カリグラ帝の馬悪名高き皇帝カリグラ元老院議員になったカリグラの馬
大王の奴隷の話アレクサンダー大王大王の召使
師から見たブルータスカエサルを暗殺したブルータスブルータスの恩師
キリストの弟イエス・キリストイエスの弟
ネロ皇帝の双子の兄悪名高き皇帝ネロネロの双子の兄
饗宴・地獄編 第一夜世界の女性有名人大勢
饗宴・地獄編 第二夜日本の歴史で有名な女性も大勢

上の絵はギュスターヴ・モロー 『出現』 サロメが指差す向きに踊りの褒美にいただきたいと言ったヨハネの首が出現している絵である。新潮文庫の表表紙になっているのと同じ位置でトリミングしてみた。

 新潮文庫 2003年発行 400円
    元々は 1983年中央公論社で刊行 
          1986年中公文庫で刊行

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